2017年8月21日月曜日

石母田正『日本の古代国家』(1971)


古代における国際関係を契機とする支配構造の変化、すなわち大化の改新以降の律令の導入と、それに伴う、いわゆる公地公民制が代表するような、領域支配と人民の管理(への意志)が、逆に主体である支配者層の構造を抜本的に変化させてもいった、という論旨。非常に面白いです。大王あるいは天皇の存在を絶対化せんとする中央集権化により、大王あるいは天皇という存在が、制度の中に位置付けられ組み込まれることで結果として相対化されていく。このような動向は後世の藤原氏の隆盛や、著者が言うところの「中世」の到来などにも直通する流れなのだと思います。

冒頭の「はしがき」にて、「愛国心」や「国家利益への従属」が政治により説かれるような執筆当時(1970)の社会動向を明記し批判しつつ、自らの著作を「死滅した過去の国家について考察」だと言い切るスタンスは本文にも貫徹されております。浅学な僕にとって本書は、著者の本書へと至る来歴も含め、様々な文脈が交錯する奔流のようなもので、基本的には溺れる中を足掻くような読書であります。