2010年9月8日水曜日

八月の終わり その1


八月の終わりの一日に、二つの写真展と一本の映画をハシゴしまして、全部が全部面白かったので、思った事を書いてみます。

まずは国立新美術館の、写真展というわけでもないマン・レイ展。

写真の展示は実際少なかったんですが、様々な展示がどれもこれもとても面白かったです。マン・レイが実際使っていた物を直に見た時には予期せず心を揺さぶられました。そのほか、パートナーのジュリエットさんを撮った写真も多くあり、何とも言えない親密な共犯関係が相当ナイス。マン・レイは1890年生まれなんですねえ。

建築家の磯崎新氏が、特設ウェブサイトにあるインタビューの中で、「シュルレアリスムの問題は言語の問題」と言ってるんですが、マン・レイにしろロートレアモンにしろ、言語を問題にせざるをえないというのはつまり、ある面で、移民の時代の試みであるからではないかと思いました。移民の時代とは逆にいうと、国家の時代ともいえるかと思います。

写真は、むしろ言語を介さず意味や内容?を伝える点で(いや、特定の一つの言語に依ることがない、と言ったほうが良いのか)、同じく移民の時代を背景にしてるように思います。マン・レイと、例えばロバート・フランク。セバスチャン・サルガドにヨゼフ・クーデルカ。キャパなんかもまさにそういった移民の時代の申し子ちっくな来歴を持ってます。僕もせめて気分だけは移民として写真を撮っていかねばなならぬと、厳粛な気持ちになった次第であります。マン・レイ展はそんな馬鹿な発想を気軽に許してくれる、厳粛さとは無縁の、あくまで陽気な空間でありました。

そういえば、全く話が変わるんですが、6月に公開されたマノエル・ド・オリヴェイラの映画『コロンブス 永遠の海』の中の、若い頃の主人公が移民としてニューヨークに赴く一連のシーンは物凄く良かった!いや、全編面白かったんですけどね。このポルトガル人監督は1908年生まれ。僕から見たらマン・レイと大差ない年齢です。