先日奥さんの実家がある秋田に行って参りました。初めて見る東北日本海沿岸の光景には静かに感動。帰りは太平洋岸の岩手県釜石市に寄り、数日滞在し写真を撮っております。
秋田の本屋ではアントニオ・タブッキの『時は老いをいそぐ』(河出書房新社)を見かけ、即座に購入。『レクイエム』の作家の本を『声、意味ではなく』を書いてもいる和田忠彦氏が翻訳しているというだけで既に読まない理由がないのですが、今回はそれよりもなによりも、表紙の写真がジョセフ・クーデルカであったことが即買いの決め手となりました。
写真学校に入って意識的に写真家の写真を見るようになり、初めに「すげえ!」と唸った写真家の一人がクーデルカです。そして彼の写真を好きになったキッカケとなった一枚が、今回表紙に使われている写真。MAGNUM PHOTOSにはここ最近毎年?出している作家図録的な本があるのですが、写真をやり始めた僕は、その本に載っている大量の写真の中から特にコレだ!と思うものをピックアップし、誰が撮ったか名前を見て覚えようとしたわけです。その時の本は作家ごとでなく確か地域ごとに括られていて、結果的に印象に残った写真の多くがクーデルカの写真であったことに我ながら驚いたのを良く覚えています。その中の一枚が、表紙の写真です。MAGNUMですから時事や世界各地「について」の写真が沢山ある中、何やら説明のつかない時空が写真になっている風なのが異彩を放っており、非常に印象的でした。それからというもの彼の写真を「これが写真だ!!」と思い込み、今に至ってもその姿勢はあんまり変わっておりません。今一言でいうと、他者を「代-表」するんではなく、在りえない他者の視線を「代-表」したような有りえない写真を撮るのが、ジョセフ・クーデルカという人だと思っています。