Klavdij Slubanという人の、『EAST TO EAST』です。最近の悪い円高とやらの影響により、とても安く手に入る状況だったので、元本とおぼしき仏版の『Transsiberiades』は避け、今回は米版を入手しました。三千円と少ししかかかっていません。
内容は、シベリア鉄道を西から東へ向かう行程で撮られた写真、といえば良いでしょうか。東欧からアジアの東、ということでのEast to East。そしてその行程は大体において「旧東側」と呼ばれる地域を行く訳で、そのあたりもまたEast to East。いやはや、東にも色々あります。どうやら相当な年月をかけつつも、そのわりに、「年月かけてんだぞ!」と迫るようなこともなく、あくまでパッセンジャー視点なのが、とても良い感じ。
おそらく、一枚一枚の写真に格別の意図や意味はなく、解釈を求めてるわけでもないと思います。事前に考えているテーマ主題があったと思いますが、撮影に際してはそういったのを思いきり遠ざけ、カメラを介して様々な方向に向かう視線にどこまでも忠実なように思え、僕はとても好きです。
作者のSluban氏にはウェブサイトもあり、これがかなりナイス。Photo Pocheなんかも出てますし、旺盛に活動を続けて来た方のようです。僕は今まで全然知らずにおりました。ちょっと前の仏の新聞『Le monde diplomatique』にも見開きで大きく、この本の写真と、それについての本人による文章が載っていまして、まあ辞書を引き引きこれから内容を追ってみようかなと思ってます。
新作にしては久しぶりに見たモノクロ、B&Wの写真集でした。この写真集を見るのと同時期に、R・フランクの『Black White and Things』を見まして、古い写真を集めたものですがこちらももちろんB&W。この二冊にもう感心しきり。一枚の写真とは、付与される意味意図価値とか審美的な内容とかピントがきてるとかを超えたところで、それ自体もう奇跡っぽいです。