2019年6月29日土曜日
映画2019その2。 深作欣二回顧上映と、谷口千吉版『ジャコ万と鉄』。
5月、国立フィルムアーカイブでは、深作欣二の回顧上映が開催されました。深作作品だと「ジャコ万と鉄」(1964)と「柳生一族の陰謀」(1978)、そして「魔界転生」(1981)の3本を、かねてから是非スクリーンで見たいと思っており、今回の回顧上映で「柳生」と「魔界転生」は念願が成就。抜群の面白さに感動しました。阿佐ヶ谷での錦之助特集に重点を置いていたので、その他は控えめに、デビュー作の風来坊探偵シリーズと、仁義なき戦いシリーズを楽しむにとどめております。仁義なき戦いの一作目も非常に好きな映画です。ちなみに、一作目を見た同じ日に、銀座にてゴダールの新作「イメージの本」(2019)を鑑賞。どうということもないのですが、両方共に原子爆弾爆発によるキノコ雲の映像が出てきます。
上映のなかった「ジャコ万と鉄」については、あらためてネットで作品について検索することで、深作版ではなく、オリジナル版、谷口千吉監督による「ジャコ万と鉄」(1949)がつい最近ソフト化されていたことが分かり、即座に購入、鑑賞しました。深作版が面白かったので、より評判が高かったりもするオリジナルがどんなものなのか、すごく興味がありましたが、期待に違わぬ面白さ。北海道のニシン漁場を舞台にした映画で、月形龍之介演じるジャコ万と、魅力爆発の若き三船敏郎演じる鉄。二人が大勢の漁師たちと共にニシンを満載した網をたぐるシーンや、三船と浜田百合子演じるユキが馬車で何度か交錯し会話を交わす雪の辻のシーンなどなど、素晴らしいシーンの連続でした。
深作版に比べて、谷口版はニシン漁場とそこにいる人たちの風俗、時代の息吹きみたいなものを、まさに活写しており、より鮮烈な印象です。とはいえこの違いは優劣と言うより、谷口版がまだニシンが獲れていた頃の映画で、深作版は、乱獲により、すでにニシンが獲れなくなっていた時代に作られた映画であるという事を前提とした差異と見ることも出来るかと思います。